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このプロジェクトのポイント
- 一期一会を大切にし、体験教室で人と関わりながら、伝統工芸を守り抜きたいという職人の思い
大切な人のために贈る、プレゼントにも最適な世界で一つの銀作品つくりを体験してみませんか?
長く愛用される銀の材質特性を活かし、実用的で「用の美」と称される銀器の魅力 -
はじめに
- はじめまして。東京都台東区にある工房で伝統工芸品・銀器(ぎんき)を作っている銀師(しろがねし)の上川宗伯と申します。祖父が創業した日伸貴金属の3代目として、一族とともに銀器の製作販売をしております。銀師は江戸時代より銀細工をする職人のことで、現在は私達の住む東京下町に数名しかおりません。
学校卒業後は寮生活をしながら貴金属メーカーに勤務。同じ貴金属に関わる仕事ではありながら、金属加工のほか、総務や人事としての経験を積み、実家の工房ではできない貴重な経験となりました。その後実家である日伸貴金属に戻り、職人歴は28年となりました。 -
- 私が大切にしていることは「お客様と関わりながら職人を続けること」です。メーカーでの勤務時代はお客様と直接関わる機会が少なかったことから、お客様と対話し、自分の想いも伝えながら作品づくりをしたいという想いを持つようになりました。職人として作ることに専念するだけでなく、対面でお客様とコミュニケーションを積極的に取りたいという考えが、体験教室のアイデアにつながっております。
若い世代や馴染みがなかった方々にも銀器について知っていただき、伝統工芸に関心をもっていただきたいという思いから、伝統は守りながらも、ウェブやSNSでの情報発信などの新しい取り組みも始めているところです。 -
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コロナウイルスで浮き彫りになった銀器と銀師の課題
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- 2020年にコロナウイルスが蔓延し、主な卸先である百貨店は営業停止や観光客減少により、売上は半分以下になりました。同時に情勢が不安定なため材料は高騰。銀器の伝統を守り続けていくためにはどうしなければいけないのかを考えるキッカケとなりました。また銀器制作には眼鏡を二重にかけて行うような非常に細かい作業などが多くあり、身体に負担がかかります。そのため職人として制作活動を継続することの難しさもあるため、なかなか若い銀師が増えないのも現状です。
江戸時代から伝わる確かな技法と技術があるにも関わらず、様々な理由で伝統工芸が広まりづらいことは携わる職人として残念に思っていました。そして後世にもしっかりと伝統を根付かせるには、まず多くの人に知ってもらうことが必要だと考え、実際に銀器に触れることができる体験教室をさらに強化したいと思い、クラウドファンディングに挑戦することにしました。 -
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江戸時代から伝わり、長く暮らしに寄り添える銀器の魅力、「用の美」とは?
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- 銀器の魅力は、長く使い続けることができること。つまりお客様によって育てていただくことができる工芸品であるということです。銀は表面上の経年変化はしますが、半永久的に形が残る素材なのです。金属のなかでも柔らかい素材なので、表面を軽く拭くなどの手入れをしていただくことで味わい・風合いが出て「いぶし銀」になります。使う人とともに変化する、それが銀器の魅力ですので、飾りとして置いて見た目を楽しむというより実用的に使っていただきたいです。そしてそれが日本の伝統工芸品の特徴でもある「用の美」の考え方にもつながっていきます。
- 海外のものは日用品は使うことだけ、美術品は美しさだけを目的としてつくられるものがほとんどですが、日本の伝統工芸品は実際に使うことができて、なおかつ美しい。そういう作品になるよう、機械では大体の形にしかできないところを、より平らに、より滑らかになどと、手触りを何度も確かめながら伝統技法を使って1つずつこだわって仕上げています。
そういった「用の美」の考えを大切にし、購入時に美しい状態であることはもちろんですが、使うほどに手になじむ、磨いて使い続けるほどに愛着がわいてくる、ピカピカに磨けばフォーマルにも使える。私達はそういったことを考えながら、長く使っていただける銀器づくりに努めております。 -
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初心者さんでも安心の体験教室
- 私達の工房には、年齢性別もさまざまなお客様が体験をしにいらっしゃいます。これはお客様と関わりながら職人を続けたい私にとって大変ありがたいことで、毎回やりがいを感じますし、大切にしていきたい時間です。これからももっと、たくさんの方に銀器に触れてほしいと思っています。
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- 体験教室を始める際には、まず銀器の歴史や伝統についてご説明をいたします。
日伸貴金属は1700年頃から金銀で兜を作っていた平田派の技法を継承しています。工房には80年以上使い続けている工具もあり、かつ現在はもう作ることができない工具ですので、工具屋さんから博物館級と言われるのも、私どもの工房ならではです。
年々職人が減る中、職人から日本工芸の背景や歴史と技法を直接説明を受け、そこで銀器体験ができるのは日伸貴金属の強みだと思っております。 -
- そして、使用する道具の説明を丁寧にいたします。私が最初から最後までサポートいたしますので、初心者様でもその日にお持ち帰りいただける「世界に一つ」のオリジナル作品ができます。
今まで7割ほどが女性ですが、お子さんからご年配の方、海外からの方と幅広く体験にいらっしゃいます。カップルでお互いへのギフトをつくりあう方、お一人様でいらして集中して取り組まれる方、グループや学校の授業で来られる方など様々です。
体験教室に参加されたかたから、「一番心に残ったことは、何代も続く伝統を引き継ぐことゆえの「信念」を体験を通じて感じました。」、「指輪を綺麗に磨く作業で、磨けば磨くほど布も手も黒くなりましたが指輪がピカピカになっていき、完成した指輪を見て本当に嬉しかったです。今は、母がその指輪をしています。」などたくさんの感想をいただきました。ぜひ皆様にも新たな発見があると良いなと思っております。 -
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リターンについて
- 工房にお越しいただき銀器をつくる体験プランはプロジェクトそのものの目的であり、ぜひおすすめしたいと思っております。体験プランの他にも、職人が作る純銀アイススプーンや江戸から伝わる造形方法を活かして加工したこだわりの珠盃のご用意もあります。
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- また、クラウドファンディング挑戦にあたり、今回限定の純銀タンブラーをご用意することにいたしました。日常的に使いやすく、美しさを兼ね備えた「用の美」を感じていただける作品となるよう試作を重ねているところです。純銀ですのでビールなどの冷たい飲み物はより冷たく召し上がっていただけますし、機能的には抗菌作用や、酸味を抑える効果もございます。自身で使ってみても、このタンブラーで飲むビールは格別で気持ちも満たされます。ぜひ皆様にもこのタンブラーに入れた飲み物で一日の疲れを癒していただきたいです。
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資金の使い道
- ご支援いただく資金は、主に体験工房のリフォームの工事費として使わせていただきたいと考えております。今の工房は築25年で痛んできたところもあるのですが、「安心する」「ほっとする」というお声を頂戴しております。そういった安心感や伝統は守りつつも、かしこまりすぎずに気軽に銀器に触れていただくために体験教室を整えることで、皆様が足を運びやすくなり、銀器の認知が広がればありがたいです。
今はコロナで難しい状況ですが、歴史ある上野エリアを訪れる国内外の方に、もっと銀器のすばらしさに気づいてほしいと思っています。自分にできることは限られていますが、私達がメッセージをどんどん発信し、それを受け取っていただくことが、ゆくゆくは次世代の若手職人の育成や伝統工芸の継続に繋がると考えています。守るべき技術や歴史は継承し、革新的に新しい試みをすることは、若手職人にとって必要なことだと思っております。 -
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おわりに
- 銀器を通して出会う一つ一つのご縁が本当に大切だと思っていて、有難いと思っています。
日本では銀はリサイクルのものを使っているのですが、最近SDGsでも言われるようになった「ものを大切にしましょう」というメッセージは日本では昔から言われてきたことです。皆さんが体験教室にお越しいただき、銀器に触れることで銀器をもっと皆さんに知っていただき、その作品を大切に長く使っていただけると嬉しいです。 -